水虫(皮膚真菌症)は放置しないで…慢性化のおそれ
真菌(カビ)が引き起こす皮膚真菌症は、誰でもかかる可能性のある病気です。代表格の水虫は、日本人の5人に1人と言われています。放置すると慢性化してしまうので、予防と治療をしっかりとすることが重要です。
慢性化のおそれ
皮膚に付いたカビは、温度25~30度、湿度約65%以上のじめじめした環境を好み、皮膚表面の角質をエサにします。
皮膚がこのような状態だと、カビは繁殖して角質に深く侵入します。その際の免疫反応で、腫れたり水ぶくれができたりします。
梅雨のじめじめ時に発症しやすいのですが、暖房や加湿器を使う冬も、注意が必要です。
水虫(足白癬(はくせん))の原因は、カビの一種の水虫菌(白癬菌)です。温泉施設のバスマットや居酒屋のサンダルなど、不特定多数の人が利用するものに張り付いて、足の裏や指の間に感染します。
水虫になると、足の皮膚が赤くなってむけたり、白くふやけたりします。足の裏やかかとが硬くなって、かゆみや痛みが出る人もいます。放置すると症状が常態化してしまい、治りにくくなります。
水虫菌が足の爪と皮膚の間に入り込むと、爪水虫(爪白癬)を発症し、爪全体や一部が変形してしまいます。かゆみは少ないのですが、放っておくと水虫が再発したり、家族にうつしたりします。
皮膚真菌症は、胸の下側やわき、脚の付け根などにも発症し、カンジダ菌が炎症を引き起こします。汗の量が多い人は、皮膚の表面に常在しているマラセチア菌によって、胸や背中に症状が出ます。
いずれも、赤いぶつぶつができて、かゆみや痛みがあります。ただ、症状の無い人も多くいます。
この病気の治療は、患部とその周りに抗真菌薬を塗ります。水虫の場合は、『症状が治まるまでに1か月』以上、『再発を防ぐためには1か月半~2か月』以上も、薬を使い続けます。
爪水虫では、半年ほど、薬を飲み続けなければいけません。最近は、副作用の少ない塗り薬が出来て、治療に使われています。
糖尿病患者は注意
糖尿病の人で神経障害を併せて発症している人が水虫や爪水虫になると、危険です。症状が悪化して患部が化膿(かのう)しても痛みに気づかないからです。
最悪の場合、足が腐る「壊疽(えそ)」になって、切断しなければいけないなんてこともあります。糖尿病患者らを対象にした、足の健康診断をする「フットケア」に取り組む医療機関も増えていて、対応してくれます。
皮膚真菌症の予防には、蒸れやすい所を丁寧に〝洗い〟、よく〝拭いて〟〝乾かす〟のが効果的です。水虫菌は、足に付いてから12~24時間で角質に侵入するので、1日1回は足を洗うといいでしょう。
ある病院の皮膚科の部長先生は、水虫の市販薬は使い方を間違えると治らなくなります。再発したり、家族にうつしたりする心配がなくなるまでは、しっかりと医師に診てもらい治療してください。薬の塗り方などのアドバイスも受けられるので、気軽に皮膚科を受診してみてください、と話しています。
水虫と似た症状(病名)
水虫とよく似た症状を持つ病には、次のようなものがあります。それぞれ、原因や治療法が違うのでおさえておきましょう。
* 接触皮膚炎
何らかの物質が皮膚に接触して起こる炎症のこと。いわゆる『かぶれ』といわれるもので、刺激性のものとアレルギー性のものとがある。
かゆみや湿疹、赤い腫れなどの症状が見られます。
* 皮膚カンジダ症
常在菌のカンジダ属の真菌による感染症で、かゆみや発疹、赤み、腫れなどが見られます。
* 汗疱
(かんぽう)
手のひらや指、足の裏に、小さな水ぶくれが多くできる皮膚疾患です。刺激性接触皮膚炎を伴うと、広範囲でかゆみが起こることも少なくありません。
* 掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
手のひらや足の裏に、小さな水ぶくれが多くでき、膿がたまり、皮膚が赤くなります。よくなったり悪くなったりを繰り返す疾患で、軽いかゆみを伴うこともあります。